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大阪大学基礎工学部電気工学特別講義2022年度力武担当分に関する所感

今年2022年も大阪大学基礎工学部電気特別講義を一部担当したのだが、いくつか気のついたことがあるので、書いておく。

最初に大前提の話をする。

大学教育において学生が解くべき課題とは

以下のコメントをもらった。

これは 大学教育ではあたりまえのこと であって、講義なり教材の中身をヒントにして、それらに明示的に書かれていない内容について自分の力で調べて考えて課題を解決する、というのが大学教育の特色であると私(この記事の筆者)は理解している。課題の出題にあたっては講義からの発展的な内容、それも基本的な質問を出すようにしており、それを解く過程で少しでも頭を使ってもらおうというのが出題意図である。

どんなことでも、わからないならわかるまで調べて考え抜く以外に方法はない。そしてその答は誰かが与えてくれるわけではない。 大学は小中高とは違い答えのあることを学ぶところではない。

階層IPアドレスの問題

階層化されたIPアドレスの限界と弊害について聞いたのだが、難しかったようで、こちらの期待した答はなかったように思う。この課題の議論として適用できるであろう技術要素のいくつかに関して書いておく。

並行処理/並列処理におけるデータの一貫性の問題

並行処理/並列処理で発生しえるデータの一貫性に関する問題について聞いたのだが、これも難しかったようだ。この課題の議論として適用できるであろう技術要素のいくつかに関して書いておく。他にも無限に論じるべき内容はあるだろう。

私はこの問題に対して自信を持って答えることはできない。それほどまでにこの問題は難しい。幸い日本にはこの記事の筆者のような達人はいるが、その達人をもってしても理解も実装も難しい問題である。

じゃあなんでそんな課題を出したのか。それはこの課題がコンピュータだけでなく世界の認識についての根本的な原理に触れているからである。

好奇心は学べるものだろうか

レポートを見ていて、根源的な興味を惹く質問があった。以下紹介して、私の所感を述べておく。

結論からいえば、試行錯誤するしかないのだけど、やってみたら後から好きになっていくこともたくさんあるだろうから、まずはちょっとでも面白そうだったら手を出してみるのがいいし、あるいはあんまり面白いとは思わないけどシュッとできることがあれば、それをやりたいこと/できることにすればいいのだろうと私は思っている。

自分のやりたいことを見つける力の一部に好奇心があると、講義では話すことにしている。さて、その好奇心は学べるものなのかどうか。私にはわからない。好奇心は理由もなく湧いてくるものだからだ。そして何かを本当にモノにできる可能性があるのは、興味が持った時点ですでに手が動いている人であり、その時点でワナビーとの区別はついてしまうという言説もある。これは過酷だが事実であろう。

ただ、好奇心だけで何かのプロになれるほど、世の中は甘くもないし、狭くもない。スキルを上げていくには叩かれても手を動かすのを止めないだけの覚悟と自己正当化(使命感といえば聞こえはいいが理由のない情熱は究極的には自己正当化以上でも以下でもない)をするだけの図々しさが必要になる。

私も20歳代のころは、本当にコンピュータが自分の仕事になるのかどうか、不安だった。当時(1980年代後半)から日本でいうソフトウェアエンジニア派遣業のSESや、そこまで行かなくてもコンピュータメーカーの仕事はあまり創造的とはいえないものだったし、ゲーム業界や他のパソコン関連産業にしても、残業が多くおよそ人間的な生活はできそうになかったという印象がある。たぶん2020年代でも根本的には変わっていないだろう。人間個人の能力に依存する仕事は、長時間労動になりがちだからだ。

その状況を変えたのは、1985年のパソコン通信、そして1988年以降のTCP/IP接続だった。閉鎖的な日本の社会から、ようやく外に出る方法が開かれ始めたのである。情報工学や情報科学の基礎など無視して、まずはメール、ネットニュース、WWWと、とにかく世界につなげていくことに熱中した。当時は何の仕事としての保証もなかったし、日本のソフトウェア屋やコンピュータ屋のマジョリティからの支持が強かったわけでもない(むしろ妨害や逆風が強かった)。それでもやってきたのは、 こっちのやっていることは絶対に正しいのだからこれで社会を変える という根拠のない自己正当化と覚悟だった。その結果としてどれだけのことができたかといえば、自分の健康の問題や能力のなさもあり、大したことはできていない。ただ、1980年代後半からの40年近くの変化を考えれば、間違ったことはしていないと思うし、幸いなんとか生活できるだけの仕事にはなっていると思う。今仕事をいただいている私の技術士事務所のお客様にはただただ感謝しかない。

最初の話に戻るが、20歳代ならいくらでも試行錯誤はできるし、やっていくのがいいと思う。周囲がどうだとか、そんなことは無視していい。自分以外は全員無視してかまわない

おわび

以下のような感想があった。

話の内容はもっとまとめておくべきであったと私も思っている。基本的に準備時間に制約のある中で一気に録音録画しているため完璧にとはいかないが、以後注意したい。